鉄路探訪 〜第1回・東急池上線〜鉄路探訪 第1回「都心を走るローカル線 東急電鉄・池上線」(その1)
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第1回 都心を走る大手私鉄のローカル線
その1(五反田) 取材日:2010年8月12日
2010年9月6日初版公開
▲旗の台駅を蒲田に向けて発車していくオールステンレス車7600系電車。もともとは7200系として1967年に登場してから既に46年が経過し、置き換えの時期が迫っている。
 台風4号が日本海を北上し、この日の首都圏は朝から風が強く、今にも雨が降りそうな空模様だ。取材に向かう途中、列車の運行状況が気にはなったが、首都圏の私鉄はよほどのことがない限り運転を見合わせたり、ダイヤが乱れたりすることはないからとりあえず現地に向かってみた。
 五反田駅に立ったのは、ちょうど正午過ぎで空模様はいよいよもって怪しくなってきていた。それでも、都会を…それも東京の都心を走る列車にしては短い3両編成の電車に揺られてきた乗客が、どっと降りてきてそれに対応した小さめのホームに人があふれている。
 東京の五反田から目黒区と大田区を抜けて蒲田を結ぶ池上線は、東京南西部から神奈川県東部に鉄道路線を展開する大手私鉄の一つ東京急行電鉄(以下、東急電鉄)が運営する路線の一つだ。
 東急電鉄といえば、「多摩田園都市開発計画」に代表されるように、川崎市宮前区から横浜市緑区にかけての丘陵地帯を民間事業としては最大規模のニュータウン開発をてがけ、その地域を貫くように自社路線を建設。いまでは在京大手私鉄で2番目の混雑率を誇る田園都市線や、JRの湘南新宿ラインと激しい競争を繰り広げる東横線を運行している。そして、我が国で最初にオールステンレス車両を導入するなどの積極的な設備投資も行う大都会の私鉄のイメージが強いのではないだろうか。
 そんな東急電鉄の中で、池上線は昔のイメージを色濃く残す鉄道だと思う。とはいえ、東急電鉄のルーツを紐解くと、実はこの池上線と、同じ蒲田を終着駅にしていた旧目蒲線(現在は多摩川線と目黒線に分離)が起源だということがわかる。
 池上線は1922(大正11)年に、池上電気鉄道の手によって蒲田−池上間を開業させた。その後、五反田へ向かって延伸をさせていく。そして、蒲田から目黒への路線建設を目指すことになるが、創業者による会社の私物化により経営困難に陥り、その後紆余曲折を経て、常に対立関係にあった五島慶太率いる目黒蒲田電鉄と合併(実質は買収に近い)。以後、今日の東急電鉄ネットワークの一部を成すことになる。
 池上線の五反田駅は、JR山手線との接続駅であり、その線路に交差するように高架ホームがある。改札口も駅のターミナルビルに直結していて、都会の乗換駅という感じを抱くかもしれないが、実際にホームに立ってみると3両編成の、しかも大都市を走る鉄道車両としては「中型」に分類される18mクラスの列車だからかなり短く、小ぶりなのが印象につく。ホームから見下ろす山手線ホームは11両編成が停まれる長大なものとは対照的だ。
五反田駅の駅名標。木造の上屋と新タイプの表示が対照的。

 ホームを観察していくと、あちこちにノスタルジックな雰囲気が色濃く残っている。よく言えば、昔からの設備を大切に使い続けているともいえるが、悪く言えば必要最低限の設備投資に留まり、さほど力を入れられていないといえる。とはいえ、ここ数年急激に失われつつある「昭和」の雰囲気をいまに伝えていることは、なんとも嬉しい話かもしれない。
 ホームを観察していると、蒲田からの列車が到着したが、車体こそステンレス製で最近の新しい車両と遜色ない素材だが、その形は丸みがいっさいなく角張った無骨なデザインの7700系と呼ばれるものだ。この7700系は、もともとは7000系と呼ばれていて、我が国で初めてのオールステンレス車両として華々しくデビューし、東横線で急行から地下鉄直通運転までこなしていた。一時期は同じ東急系列の伊豆急にも貸し出され、同社の観光客輸送にも貢献するなどの経歴を持っていたが、東横線の車両を大型化(20m車体)に統一し、より省エネルギーであるVVVFインバーターの1000系などに追われ、この池上線と旧目蒲線に残る、鋼製旧型車の淘汰のために転属してきたのだった。
 転属に際しては、制御機器や電動機などをそのまま使うのではなく、こうした電機品と台車はすべて新しいものへと交換された。制御装置は最新のVVVF制御へと変わり省エネ性が向上。台車も空気バネ台車に交換され乗り心地もよくなり、それまでなかった冷房装置を搭載し冷房化率の向上とサービス改善を施している。だから、「見かけは古くとも中身は新しいんです。」到着した先頭車を眺めていると、そんな風に言っているような気がしなくもない。そうはいっても、やはり車体は製造から40年以上経ち、筆者が幼少の頃から慣れ親しんだ「形」の老兵であることに間違いはない。 
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