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リゾート地湘南への短絡路・「懸垂式モノレール」のモデル路線
▲夏の湘南深沢駅付近を走る湘南モノレール500形電車。湘南モノレール江ノ島線は、名古屋での試験線の実績を受けて、三菱重工を中心とするグループが「サフェージ式」と呼ばれる懸垂式モノレール拡販をも目的に、「モデル線」として建設された経緯がある。そのため、僅か6.6kmの短い路線にもかかわらず起伏に富んだ地形の中を貫くように走っている。
その1(大船−富士見町) 取材日:2011年8月10日
2012年1月28日初版公開
 「モノレールって鉄道なの?」と同僚と話しているとよく聞かれる。確かに、知らない人にとって見れば、モノレールが鉄道の一種類であることは想像しにくいかも知れない。でも、「モノレール」という言葉の通り、やはり鉄道の仲間であることに間違いはないのだ。
 この年の夏も、猛暑がやってきていた。ただ7月末の台風6号通過後、暫くは涼しい日が続いたので、前の年の酷い猛暑に比べればまだよい方だ。気温が35℃近くになった暑い日の午後、湘南モノレールを訪れるべく大船駅へと降り立った。
 湘南モノレール江の島線(以下、単に「江の島線」という)はJR東海道本線の大船駅と、湘南海岸にある江ノ島近くにある湘南江の島駅を結ぶ総延長6.6kmの懸垂式モノレールである。総延長6.6kmは一つの鉄道路線としては短い距離だと思うが、この湘南モノレールは短い割には起伏に富んでいて、筆者にとって楽しい路線だと思う。
 江の島線の開通は1970年のこと。当初は大船駅と西鎌倉駅間が開業した。翌1971年には西鎌倉駅〜湘南江の島駅間を開業し、全線開業となった。当時、この地域はそれほど開発されてなく、住民の脚というよりは観光地江ノ島へのショートカットルートとしての性格が強かったようだ。そして、何よりもこの湘南モノレールを語るときに避けて通れないのが、「三菱」という存在だろう。

▲(上)湘南モノレール大船駅。JRの大船駅に隣接しており、比較的乗換の便もよい。特に駅ビルの「ルミネウィング」とも繋がっているので、買い物をしながらの乗換もできる。 (下)大船駅−富士見町駅間を走る500形電車。湘南モノレールは写真のように、ほぼ全線に渡って真下に道路が並走する。この道路は元々「京浜急行線」と呼ばれた京急の敷設する私道であったが、現在は鎌倉市と藤沢市の市道になっている。
 湘南モノレール建設の目的は、路面電車に変わる新しい都市交通機関として、モノレールが着目されていたことに始まる。当時、日本においてモノレールはまだ模索の段階で、日立製作所が主導権を握る跨座式モノレール(こちらは、東京モノレールで採用)に対して、三菱重工を筆頭とする三菱陣営は懸垂式モノレールを推し進めていた。そうした中で、跨座式モノレールに対する優位性を実証するために、大船から鎌倉の険しい山々を通って江の島へと通じるルートを選んだという。実際に乗ってみると、確かに勾配の厳しい箇所もあり、そこをモノレールが苦もなく走り抜けていく。そうした経緯をもつ江の島線だが、その成果は千葉都市モノレールに結実しているという。
 江の島線の大船駅は、当然のことながら高架駅である。JR大船駅に隣接した駅ビル「ルミネウィング」とつながっていて、乗り換えも非常にスムースにできる。改札も自動化されていてるが、ICカード乗車券には未対応なのできっぷ売り場で乗車券を買わないとならない。今回は、JRの企画乗車券「江の島・鎌倉フリーきっぷ」を利用した。
 頭端式2面1線のホームだが、通常の鉄道とは違ってプラットホームの下までの高さはあまりなく、すぐにでも下りることができそうなほどだ。列車が入る位置には、水色のすのこのようなものが敷き並べられている。もちろん、降りようものなら駅員からお叱りを受けるのは間違いないので、決して降りないように。
 改札口付近で様子を観察していると、列車が駅へと侵入してきた。5000系と呼ばれる、湘南モノレールの新鋭でVVVFインバーター制御を採用した車両だ。基本的なスタイルは従来の500形電車と大きくは変わらないものの、正面のブラックフェイスや両開きドアの採用など、より近代的なスタイルになっている。車内に入ると既にほとんどの座席は埋まっていた。ある程度の需要はあるようだ。
 そして、一つ気付いたのが何となく「薄暗い」という印象。確かに、節電が叫ばれる中で車内の照明を切っていることもあるだろうが、それにしても薄暗い。よくよく車内を観察してみると、窓は最近の流行でもある熱線吸収ガラスを使っているために、光があまり入ってこないようだ。もっとも、このガラスのおかげで冷房効率が上がるのだから、致し方ないことなのだろう。
 車掌が発車合図の笛を鳴らすと、ドアーが閉まってすぐに発車。最大80‰の急勾配をも登る性能を持つだけに加速も力強い。ホームを飛び出すと、眼下にはバスターミナル、右手には真っ白な大船観音が見えてくる。そして、左に右にと連続するカーブを抜け、狭隘な道路の上を通り抜けていくと、やがて横須賀線をオーバーパスする。モノレールならではの眺めに関心していいると、僅かに雑草の生い茂った一本の線路を見ることができた。
 この線路、かつての鎌倉総合車両センター深沢地区・・・いや、大船工場と呼んだ方が分かりやすいだろう・・・へ続く線路だ。既に廃止となってから5年が経っているが、いまだ撤去されずに残されている。ある程度のメンテナンスがされているのか、廃線にしてはきれいな方だ。
 そんな廃線跡を見ると、列車は富士見町駅に着いた。
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