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取材日:2011年8月10日/8月28日
掲載日:2011年8月31日
▲その名の通り、国道15号線に面したところにある国道駅。大都市の中にある駅前は多くの自動車が行き交うところだが、駅そのものはおよそ大都市の中にある駅とは思えないほど、昭和の香りが濃く残っている。
 国道駅はその名の通り、国道に面したところにあることから名付けられた駅だ。鶴見駅から鶴見線に乗って最初の駅で、東海道本線を跨ぐ形で別れ、海岸沿いへと向かうところにある。
 冒頭でも紹介したように、国道15号線に面したところに駅がある。ホームは高架上にあるのでが、面白いのは駅舎。道路沿いには「国道駅」という看板があるのだが、その場所と言えば高架のガード下。しかも、高架駅のように線路方向に看板があるのではなく、枕木方向に看板があるのだ。そして、駅の入口も高架橋の真下を入っていくような形になっている。
 国道駅の開業は、鶴見線の前身である鶴見臨港鉄道が浜川崎駅を起点に鶴見に向かって延伸させた1930年になる。開業当時からこの駅は高架駅で、駅の構造物はその当時からほとんど変わっていないという。相対式2面2線のホームにかかる上屋も、最近の駅で見られるような鉄骨をボルトでつないで組み合わせた角張ったものではなく、鉄骨を曲げて造った曲線美のある柔らかなデザインのものは、やはり昭和時代の風格が漂う立派なものだ。そんな古い構造物も、21世紀に入った今なお現役というのは、当時の工業技術を今に伝える貴重な存在であり、何とも頭の下がるものだ。

▲国道駅のホームにかかる上屋。最近建設される駅ではなかなか見ることのできないアーチ状の曲線構造。鉄骨を組み合わせて造った無骨な上屋と違い、どこか美しさを感じさせる。昭和の建築技術者の「粋なこだわり」が感じられる。手間をかけたこと照明するかの如く、当時としては当たり前だった「リベット打ち」で組み合わせてあるのが解る。
 上屋の下にある、駅名標こそJR東日本の標準的なものへと替えられているが、その後ろにあるトラス状の鉄骨もまた、現在ではなかなか見ることのできない構造物だ。それをつなぐために留めてあるボルトもまた、太くて頑強に見える。さらに、国道駅のホーム自体がカーブ上にあるので、こうした曲線のある構造物とよくマッチしていて、どこか昭和時代へタイムスリップした感じさえある。
 さらに昭和時代のよさを伝えるのが、改札口のある高架下の「トンネル」だ。昼間でも照明が少ないために薄暗く、どこか陰湿な感じもしないわけでもないが、国道沿いの入口から運河沿いの入口に至る「ホームの真下」には、かつては多くの店が存在していたことを今に伝える、店跡が連なっている。その中でたった一軒だかでが、赤い提灯をぶら下げた焼き鳥屋のような店が営業していた。恐らく、かつては他にも同じような店が営業していて、工場で仕事を終えた労働者たちが、家路の途中この駅で降りては冷や酒を片手に、仲間たちと語らったのだろう。
 この一種独特の高架下の構造物もまた、開業当時から手が入っていない貴重なものだ。ホームの上屋と同様に、高架橋を支える橋脚もまた、曲線美のあるデザインになっている。ここにも、昭和の匂いが漂っていた。こんな独特の構造物をもつ駅を見逃さないはずもなく、古くは黒澤明監督の映画から、テレビドラマなどでも度々ロケに使われるらしい。
 国道駅は昭和の工業技術のよさを伝える駅でもあるが、同時に暗い歴史の生き証人でもある。先ほど紹介した国道沿いの入口の壁を観察すると、崩落防止用に張られたネットの下にある壁に、いくつか穴のように欠けたところが見える。これは、第二次世界大戦のさなか、米軍機による機銃掃射の跡だという。鶴見線は戦時中に国有化されたことからも、沿線は重工業が盛んで軍事的にも重要な地域となっていた。米軍にとっても鶴見線沿線は重要な軍事目標となるのは当然のことで、工場労働者や動員される工員を輸送する鶴見線も攻撃目標となったのだろう。鶴見線には、他にも戦争の爪痕が多数残されたところがあるが、これもまた駅や橋梁などといった施設のほとんどが、開業当時からのものが使われているからだといえる。
 古き良き時代と良きもの、そして悲惨な過去を今に伝える国道駅。構造物の老朽化は避けては通れないが、いつまでも大切に使われてほしいと思わずにはいられない。そんな国道駅でまだまだ暑い風に吹かれながら、、今日もまた仕事を終えた人たちで混雑する3両編成の列車を見送っていた。 
▲映画やテレビにも登場する国道駅ホーム下に広がる「高架下の商店街」。現在はほとんどの店が閉まっているが、かつての賑わいが蘇ってくるようだ。 ▲鶴見線には、歴史の生き証人とも言える痕跡が多く残っている。国道駅の入口にある壁面には、このような何かで剔られた跡がある。第二次世界大戦中に米軍機の機銃掃射による弾痕。

▼夕日が差す国道駅のホーム。夕方の通勤ラッシュ時間帯に差しかかっているのだが、ホームで列車を待つのは筆者ともう一人だけだった。乗降客は一日を通してあまり多いとは言えず、およそ都会の駅とは思えないような静けさが駅には漂っている。上屋の曲線アーチの構造物が、夕日につくられたシルエット担って独特の雰囲気を出している。
駅概要
駅名 国道(こくどう)駅
所在地 神奈川県横浜市鶴見区
所属事業者 東日本旅客鉄道(JR東日本)
所属路線 鶴見線
キロ程 鶴見起点 0.9km
駅構造 高架駅
ホーム構造 2面2線(相対式2面)
駅種別 旅客駅
開業 1930年10月
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